MBTIの4文字から、映画の好みはどこまで言えるか

「INFPが好きな映画」「ENTJにおすすめの5本」—— MBTIのタイプ別に映画を紹介する記事はいくらでも見つかりますが、 出典が書かれているものはほとんどありません。

実のところ、MBTIと映画の好みを直接調べた研究は見つかりませんでした。ただし、あきらめるのはまだ早いです。遠回りをすれば、つながる道があります。この記事では、2つの研究を橋渡しして、 あなたの4文字から実際に何が言えるのかをたどってみます。

MBTIの4つの軸は、別のものさしに翻訳できる

性格を扱う学術研究の多くは、MBTIではなくビッグファイブ(開放性・誠実性・外向性・協調性・情緒安定性の5つ)を使います。 そして映画の好みを調べた研究も、ビッグファイブのほうです。

そこで鍵になるのが、1989年にMcCraeとCostaが発表した研究です。 19歳から93歳までの男性267人・女性201人に、MBTIとビッグファイブの両方を回答してもらい、MBTIの4つの軸がビッグファイブのどれに対応するのかを測りました。結果はきれいに対応がつきました。

MBTIの軸対応するビッグファイブ相関(男/女)
2文字目
S–N(感覚・直感)
開放性.72 / .69
1文字目
E–I(外向・内向)
外向性−.74 / −.69
4文字目
J–P(判断・知覚)
誠実性−.49 / −.46
3文字目
T–F(思考・感情)
協調性.44 / .46

E–IとJ–Pの符号が負なのは、論文が2文字目(内向・知覚)の方向にスコアを取っているためで、 関係の強さは絶対値で読みます。

特にS–N(2文字目)と開放性の結びつきは .72 と非常に強く、しかも本人をよく知る他人が性格を評価した場合でも .61 と保たれました。 この2つはほとんど同じものを測っている、と言っていい水準です。

そしてもう一方に、ビッグファイブと映画の好みを3,000人以上に聞いた調査があります。 この2本をつなげば、MBTIの軸 → ビッグファイブ → 映画の好みという道が通ります。

2文字目(S / N)——ここがいちばん確か

橋がもっとも太いのが、S–Nと開放性のところです。そして開放性は、 映画の好みとの結びつきでもいちばんはっきりした結果が出ている特性でした。

N(直感)の人

外国映画や名作・古典に惹かれやすい傾向。開放性と、こうした作品への好み(Aesthetic)の相関は .50、他人による性格評価でも .46 と、この分野でもっとも強い関係です。 論文はこの区分を「創造的で、抽象的で、教養的で、密度が高く、読み解く負荷がかかる」 と説明しています。

S(感覚)の人

裏返しとして、アクションやSF寄りになります。開放性とアクション・SF(Thrilling)の相関は −.16 〜 −.22 と負なので、開放性が低め=S寄りの人のほうがこの領域を好む、という向きです。 ただし後述のとおり、この数字自体があまり強くありません。

3文字目(T / F)——ロマンスとホラーで分かれる

T–Fは協調性に対応します(相関 .44 / .46)。協調性は、 映画の好みとの間に2つの関係が確認されています。

  • F(感情)の人は、 ロマンスやファミリー向けの作品を好みやすい(協調性とこの領域の相関は .24 / 他者評価 .15)
  • T(思考)の人は、 ホラーやカルト作品を好みやすい(協調性とこの領域の相関は −.18 / −.09。 協調性が低いほど、つまりT寄りほどこの領域に近くなります)

「優しい人はホラーを観ない」と言われれば、なんとなく腑に落ちる話ではあります。 ただし数字は .2 前後で、2文字目ほどの強さはありません。

4文字目(J / P)と1文字目(E / I)——あまり言えることがない

J–Pは誠実性に対応します(−.49 / −.46)。誠実性と映画の好みで確認されているのは、誠実性が高い人ほどホラー・カルトを好まない(−.13 / −.10)という関係くらいで、J型の人はこの方向に少し寄る、という程度です。

E–Iは外向性との対応がもっとも強い(−.74)のですが、肝心の外向性そのものが、映画の好みとあまり結びついていません。ロマンス・ファミリー系との相関が .15 前後ある程度です。 橋は太いのに、渡った先に何もない状態です。

つまり、4文字のうち映画についていちばん語れるのは2文字目のS/Nで、 1文字目のE/Iはほとんど語れないということになります。「外向的だからこういう映画が好き」という説明を見かけたら、 そこは根拠が薄い部分です。

この推論の弱いところ

ここまでの話は2段階の推論です。「MBTIの軸はビッグファイブに翻訳できる」と 「ビッグファイブは映画の好みと関係する」をつないでいるので、 直接測ったものより不確かになります。橋を2つ渡るぶん、誤差も2回ぶん乗ります。

もうひとつ、公平のために書いておくべきことがあります。 この翻訳表を作ったMcCraeとCosta自身は、同じ論文で「MBTIが本当に二者択一の性質や、質的に異なるタイプを測っているという見方を支持する結果は得られなかった」と結論しています。彼らが確認したのは4つの軸が連続した量として意味を持つことであって、16タイプという分類そのものではありません。

実用上、これは「あなたはNだ」より「あなたはNの方向にどのくらい寄っているか」で読むほうが正確、ということを意味します。判定がぎりぎりだった人ほど、 ここまでの話は当てはまりにくくなります。受け直すとタイプが変わったことがある人は、 まさにその境界付近にいる可能性が高いです。

最後に、元になった映画のデータ自体にも限界があります。 アクション・SFについては、性格との関係が別のグループで再現しませんでした。 S型の人向けに書いた部分は、いちばん足場が弱いところです。

まとめ

  • MBTIと映画の好みを直接調べた研究は見つからないが、 MBTIの軸をビッグファイブに翻訳すればつながる
  • 2文字目のS/Nがいちばん確か——N型は外国映画・古典、S型はアクション・SF寄り
  • 3文字目のT/Fは中くらい——F型はロマンス・ファミリー寄り、ホラーは苦手寄り
  • 1文字目のE/Iは、外向性自体が映画の好みとあまり関係しないため、ほとんど言えない
  • 2段階の推論なので不確かさは増える。また境界付近の人には当てはまりにくい

MBTI別のおすすめ映画を見かけたときは、2文字目に触れている部分だけは信じてもいい、くらいの読み方がちょうどよさそうです。

参考文献

  • McCrae, R. R., & Costa, P. T., Jr. (1989). Reinterpreting the Myers-Briggs Type Indicator From the Perspective of the Five-Factor Model of Personality. Journal of Personality, 57(1), 17–40. doi:10.1111/j.1467-6494.1989.tb00759.x
  • Rentfrow, P. J., Goldberg, L. R., & Zilca, R. (2011). Listening, Watching, and Reading: The Structure and Correlates of Entertainment Preferences. Journal of Personality, 79(2), 223–257. doi:10.1111/j.1467-6494.2010.00662.x

MBTI および Myers-Briggs Type Indicator は The Myers-Briggs Company の商標です。本サービスは同社と一切関係がなく、本サービスの診断はMBTIに準拠したものでもありません。

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